兄ちゃんは泣いてた
僕にバレないように
夕暮れに消えてく
最後のバスを
見つめながら
いつまでも
手を振った
それしか
出来なかった
3号線越えたら
叱られるから
帰ろバイバイ
見慣れない父親の
エプロン
見当たらない母親の
温もり
兄ちゃんは黙って
レコードを裏返し
蛇口から落ちる雫を
僕は眺めてた
幼い僕は
解らなかった
かくれんぼしてると
ばかり思ってた
今何処にいるの
いつ帰ってくるの
いつも焼いてくれた
クッキー
早く食べたいよ
家の中はいつも
ビートルズが
かかってた
心の行き場が
見つからないと
ひとりぼっちの
あいつも
歌ってた
兄ちゃんは知ってた
僕には笑ってみせた
3号線越えて
会いに行きたいけど
帰ろバイバイ
こないだの
マラソン大会
二人とも一位に
なったんだよ
まだまだ話したいよ
次はいつ会えるの
最後のバスが
あなただけを
さらっていった
3号線まで
走って追いかけた
3号線まで
走って追いかけた
どれだけ叫んでも
どれだけ想っても
3号線がいつだって
引き裂いた
焼いてきてくれた
クッキー
持ち帰ったら
怒られるぞ
すぐ食べろって
兄ちゃんは言うけど
でもこれを
食べたら
いなくなるような
気がして
引き出しの奥に
そっと
しまっておいた
兄ちゃんに
バレないように
急いで涙拭いた
信号は
青なのに
僕ら二人
渡れずに
いつまでも
手を振った
それしか
出来なかった
3号線
越えられる
その日まで
帰ろバイバイ
バイバイ
帰ろバイバイ
バイバイ